二重価格

2024年の上半期の半年間で、訪日外国人観光客数が過去最高の1778万人になりました。下半期も同じ数の観光客数が訪日した場合は3500万人超となり、その消費動向にも期待が集まっています。今回は訪日外国人観光客について書きたいと思います。

 

弊社がある六本木界隈でも複数人で連れ立ってスーツケースを転がしている、外国人観光客らしき人は毎日のように見かけます。新宿・渋谷・銀座・浅草などの繁華街を歩いても、色々な言語での会話が聞こえてくるのが日常となっています。

外国人観光客が訪日して国内でお金を使ってくれるので、喜ばしいことではありますが喜んでいる人ばかりではありません。観光地として人気の京都では移動の際に市バスを使う市民が多いのですが、多くの外国人観光客が大きなスーツケースと共に乗り込んでくると、市民が割りを食って乗れなくなったり、スーツケースの積み下ろしなどで時間が掛かりダイヤが大幅に遅れるなど、市民生活に弊害が出ています。たまのことなら黙認出来ても、毎日のように続くならば話は違ってきます。

また、京都・祇園では華やかな着物を着た舞妓さんの写真を撮ろうと追い回したり、私有地に立ち入るなどでトラブルも発生しています。アフターコロナで旅行する人が世界的に増えて、海外でも外国人観光客が増えて市民とトラブルになっている地域があります。マドリード（スペイン）ではマドリード市民が、増え過ぎた外国人観光客に「もう来ないで」という意味合いで水鉄砲で水を吹きかけたようです。外国人観光客に対してこのような嫌がらせをする事案が報じられています。

そのような状況の中で自治体や飲食店などの事業者が、訪日外国人観光客の混雑緩和の目的で、外国人観光客向けの料金のみを高く設定しようという動きが出てきました。国内在住者と異なる価格設定の二重価格です。

渋谷の飲食店では飲食のコース料金で、日本人客と外国人観光客とで1000円の料金差をつけているお店があるようです。飲食店とは異なり自治体の場合の料金差をつける大義としては、観光資源の維持、オーバーツーリズム（観光公害）対策の財源確保などが挙げられます。

海外ではエジプトのピラミッド、インドのタージマハル、ペルーのマチュピチュなどでは既に導入されており、タージマハルでは外国人の入場料金はインド人の20倍超となっています。日本の自治体の一部でも二重価格の導入に前向きな首長がいて、大阪市長は大阪城の入場料を、姫路市長（兵庫県）は姫路城の入場料を外国人向けに高くすることを検討しています。また、京都市長は市バスや地下鉄の外国人向け料金の導入を検討しています。

7月26日が開会式のパリ五輪でも似たような動きがあります。オリンピック・パラリンピック開催中の期間限定で、地下鉄・バスなどの運賃を約2ユーロから4ユーロ（約660円）に引き上げます。交通当局は「増便などに対応する為」と説明していますが、招致計画時は「開催期間中は無料にする」と言っていて、市民からは不満も出ているようです。

但し、こちらは二重価格というよりも、混雑時・繁忙時期の価格を上げる意味合いだと思います。ダイナミック・プライシングといって、ホテル・旅館などが宿泊料金を混雑する金曜・土曜や、年末年始などの料金を高めに設定することと同様だと思います。

二重価格は厳密にいえば憲法が定める「法の下の平等に反するのでは？」という意見もありますが、飲食店や自治体などで更に導入が進む可能性がありそうです。

この記事を書いた⼈

株式会社アドワン・ホーム　代表取締役
古田 晋一

宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、１級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者

新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞（全社1位）をはじめとして住友林業グループ表彰（年間全社3位以内）を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。