暗躍する地面師グループ

皆さんは地面師という言葉を聞いたことがありますか？

地面師とは不動産の所有者になりすまして、買い手を騙して他人の土地を転売する詐欺師のことを言います。地面師たちは売主になりすます役、手配を担当する役や偽造を担当する役などに役割を分担してグループを形成し、地面師グループとなります。

2017年には東京・五反田の不動産に目をつけた地面師グループが、不動産大手の積水ハウスを騙して約55.5億円もの大金を他人物売買で騙し取った事件があり、その事件をモチーフにしたドラマ「地面師たち」がネットフリックスで大ヒットするなど、大きな話題を呼びました。

今回は地面師について書きたいと思います。

つい最近では、西日本で随一の繁華街である大阪・ミナミの一等地にある店舗兼集合住宅などが、地面師グループに狙われました。表題の写真は地面師詐欺にあった物件ではありませんが、写真のような空き家や人の出入りが少ない物件が狙われることが多いです。

大阪・ミナミの事件では約14.5億円を騙し取られました。地面師グループは本来の所有者に「金を貸している」とウソの借用書を作り、所有者の住民票の写しを役所から不正入手して事件が動き始めました。

その情報を元に運転免許証を偽造。暴力団などのルートを使えば、厚みや質感などで本物と違和感がない運転免許証が2〜3万円で作れるそうです。偽造運転免許証を使い、所有者になりすまして印鑑登録を勝手に変更。このようにウソを重ねて着実に「なりすまし」を進めていきます。

本物の運転免許証にはICチップが入っており、偽造運転免許証にはおそらくICチップは入っていないと思われます。しかし、不動産の決済や登記の現場では記載事項で確認します。印刷された記載事項が正しければ、取引は前に進めていくことになります。

そして、とうとう所有権移転の決済日になり、登記の専門家である司法書士も立ち会いましたが偽造を見破れず、億単位の売買代金もほぼ現金で支払われ、まんまと地面師グループの詐欺が成功したのです。支払い方法は銀行振込などでは銀行口座からの出金の際に行員に怪しまれたり時間を要するので、地面師は現金で決済を希望することが多いようです。

今回、被害にあった買い手は中国系不動産会社と外資系不動産会社の2社でした。「安いので他社に取られたくない」などの心理が買い手側を急がせるようで、2017年の積水ハウスの事件も五反田駅前の一等地で業界では有名な物件でした。売主確認を軽視したとして、積水ハウスの社長や役員などの幹部も責任を問われたようです。

その他の有名な事件としては2013年のアパホテル関連会社が被害にあった事件です。東京・赤坂が舞台で約12.6億円が騙し取られました。IT化が進んだ今でも、数年に1回は大きな金額の地面師詐欺が報道されています。

地面師グループは儲けが多い億単位の物件を狙うことが多いですが、そうとも限りません。弊社も不動産仲介を日常的に行いますので、売買代金にかかわらずこのような事件を他人事として捉えずに、これからも確認をしっかりと行い安心・安全な不動産仲介を心掛けていきたいと思います。

この記事を書いた⼈

株式会社アドワン・ホーム　代表取締役
古田 晋一

宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、１級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者

新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞（全社1位）をはじめとして住友林業グループ表彰（年間全社3位以内）を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。