鉄道各社が貨客混載に注目！

貨客混載とは貨物（荷物）と旅客（乗客）の輸送を同一の交通手段で行うことです。

一般的には旅客のスペースを一部貨物の輸送に利用することを指します。逆に貨物を輸送するトラックなどで旅客を運ぶことも貨客混載ですが、こちらはあまり普及していません。

今回は貨客混載について書きたいと思います。貨客混載ではJR各社が全国のネットワークを活用して、新幹線による長距離輸送で先行しています。

 

JR東日本は2021年から東北新幹線を使って「はこビュン」という小口輸送を開始しました。2025年4月からは新青森〜東京間で、これまで10箱程度だった輸送量を200箱程度まで拡大して、上越新幹線などにもサービスを広げています。今秋には既存列車を改造した荷物専用車両を導入して、盛岡〜東京間で最大1000箱程度を輸送する計画です。今後、グループ全体で年間100億円の事業規模を目指します。

JR東海は東海道新幹線で2024年から「マッハ便」を始めたほか、三井不動産系のホテル宿泊者を対象にスーツの即日配送サービスを開始しました。ジャージやジーンズなどで移動して、スーツに着替えて商談というニーズに対応します。

貨客混載は鉄道に限らずバスやタクシー、航空機などで輸送することも指します。新幹線の駅に届いた荷物をバスやタクシーで届けるなどのニーズもあり、こちらも少しずつ普及しています。どちらかというと大量輸送よりも鮮度が優先される食材などを、スピード重視で届けることに適している印象です。

私鉄も実証実験などを経て、実用化に取り組んでいます。

関西や名古屋が地盤の近畿日本鉄道（近鉄）はイオンリテールや福山通運と組んで、大阪で作ったパンを近鉄特急「アーバンライナー」で名古屋へ届ける実証実験を行いました。

関西圏から名古屋圏への食品に特化した長距離輸送は、近鉄では初の取り組みです。ここ最近はトラック運転手などの労働時間抑制の取り組みである2024年問題で、鉄道の貨客混載が注目される要因でもあります。

5月23日・24日はイオン熱田店（名古屋市熱田区）には、鳴門屋製パン（大阪市平野区）の本社工場で作ったメロンパンやアップルパイ、花園ラグビー場にちなんだカレーパンなど8種類が店頭に並びました。1日約300個の大阪で人気のパンが名古屋に登場して、両日ともほぼ完売だったようです。当日朝までに焼き上がったパンは午前7時半頃に福山通運のトラックで近鉄・大阪難波駅へ運ばれ、特急アーバンライナーで名古屋へ。イオン熱田店へは正午過ぎに納品され、午後1時頃には店頭に並んだそうです。

イオンリテールによると、通常のトラック輸送では集荷や方面ごとの集約、配送にかかる時間を含めて丸一日かかるそうで、15時間ほどの短縮効果があったようです。6月以降もこの取り組みを進め、二酸化炭素の削減効果などを検証する予定です。今後は冷蔵輸送ボックスを開発することも検討して、生鮮食品の輸送の可能性を模索していきます。

近鉄は私鉄で最長の501キロの営業距離で、かつては伊勢志摩の鮮魚を大阪や名古屋へ2020年まで50年以上も運んでいました。それはコロナ禍を経て取りやめとなりましたが、鉄道輸送はトラック輸送よりも迅速なスピードで、「鮮度」という付加価値を付けて消費者の手元へ届けることが出来るので、そのニーズがどんどん高まっていきそうです。

この記事を書いた⼈

株式会社アドワン・ホーム　代表取締役
古田 晋一

宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、１級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者

新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞（全社1位）をはじめとして住友林業グループ表彰（年間全社3位以内）を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。