今回は少子化問題について書きたいと思います。
日本では少子化が進んでいることは多くの人がご存知だと思います。2023年の出生数(速報値、外国人を含む)は75万8631人で、過去最低を更新しました。政府の将来推計人口では75万人台に落ち込むのは2035年の想定だったので、少子化は当初の想定以上に進んでいることになります。出生数は2016年に100万人を切り、更にコロナ禍で落ち込み80万人を切って、2023年はとうとう75万人台に落ち込みました。1970年前後には200万人を超えていましたが、ほぼ右肩下がりで少子化が進んでいます。
1人の女性が生涯に産む子供の数である合計特殊出生率は、2022年に1.26まで下がり過去最低を更新ました。日本が現在の人口を維持するには概ね2.1程度が必要とされており、政府目標の1.8にも遠く及びません。政府は2030年頃までの数年間に合計特殊出生率を上げないと、「長期的に日本の人口が大幅に急減することが現実的になる」として危機感を持っています。
少子化の原因は複数ありますが一つは雇用問題です。正規と非正規では待遇格差が大きく、いったん非正規になると正規に転換しにくい社会的な構造があり、将来に希望が持ちにくくなる傾向があります。
子育てに時間を割きにくい「働き方」の問題もあります。2022年の女性の育休取得率は8割超ですが男性は約17%と低く、更に取得日数も女性の95%は半年以上の育休を取得しますが、男性は2週間未満で名目だけの「取るだけ育休」が過半数です。20年前の2004年の男性の育休取得率は1%以下だったことを考えれば進歩だと言えますが、これからは女性に任せきりではなく夫婦で育てる意識改革・制度改革が必要だと感じます。
他には住宅問題もあります。都心部を中心に住宅価格が高騰しており、都心5区(千代田・港・中央・新宿・渋谷)ではファミリータイプの中古マンションが1億円以上で流通される例も目立っており、一般的な会社員では手が届かなくなりマイホームを諦める人も増えつつあります。1980〜1990年頃は3LDK のファミリータイプのマンションは80平米前後が多かったのですが、最近では70平米前後も増えて1部屋が狭くなりました。住宅を借りる賃料相場も上昇傾向で、住居を構える環境が整えにくくなりました。
そのような影響もあり婚姻数が減っており、2023年は90年ぶりに50万組を下回りました。育休の問題は遠慮しないで休める職場環境を整えることも大切です。「育休を取ると周りのスタッフに迷惑がかかる」という考えから、取得に積極的になれない現状があります。代替の人材確保が出来る大企業で先行していますが、中小企業では代替の人材不足の影響もあり育休取得率が低くなる傾向にあります。厚生労働省は人材確保の為の補助金を拡充するとしていますので、期待したいと思います。
韓国では2023年の合計特殊出生率が0.72に下落したようです。首都・ソウルでは更に低く0.55となっており、日本よりも少子化が進行しています。但し雇用問題や住宅問題で同様の問題を抱えるのは日本も同じですので、対岸の火事ではありません。
宮城県・神奈川県、岡山市・郡山市(福島県)などの一部の自治体では、「子育て」の育休から一歩進んで「孫育て」の育休制度があるようです。また大手総合商社の伊藤忠商事では、本社内に託児所を設けてからは出生率が上昇したとのことです。
育休制度・補助金の拡充や企業のバックアップを推進して、安心して子育てが出来る環境を整え、若い人達が子供を増やしたいと感じる状況を早急に作らないと、日本の未来に大きな影響を及ぼしそうです。
株式会社アドワン・ホーム 代表取締役
古田 晋一
宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者
新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞(全社1位)をはじめとして住友林業グループ表彰(年間全社3位以内)を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。
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